第3章 現状分析:数字を正しく読む
施策を実行する前に、現状を正確に把握することが不可欠です。「なんとなく売上が低い」ではなく、「どのフェーズで、どれくらい問題があるか」を数字で捉える。この章では、Shopify管理画面とGA4を使った現状分析の方法を解説します。
3-1 GA4でEC担当者が最初に見るべき5つの指標
GA4を開いた時に、どの数字を見ていますか?セッション数や売上の推移を眺めているだけでは、改善のヒントは見えてきません。以下の5つを週次でチェックする習慣をつけてください。
指標①:チャネル別セッション数と転換率
確認場所: GA4 →「レポート」→「集客」→「トラフィック獲得」
流入元(オーガニック検索・有料検索・SNS・直接)ごとにセッション数と転換率を比較します。
着目すべき点:
- 有料検索(広告)の転換率がオーガニックより著しく低い場合 → 広告のターゲティングか、ランディングページに問題がある
- 直接流入の転換率が高い場合 → ブランド認知が一定あり、リピーター比率が高い
- SNS流入の転換率が0.1%未満の場合 → SNSはまだ購買に直結していない(認知フェーズの施策として割り切る)
指標②:デバイス別転換率
確認場所: GA4 →「レポート」→「ユーザー」→「テクノロジー」→「デバイスカテゴリ」
スマートフォンとPCの転換率の差を確認します。
目安: スマホ転換率がPC転換率の50%以下であれば、モバイル最適化が急務です。EC全体でスマホからの購入比率は60〜70%を占めることが多く、スマホ転換率の改善は売上インパクトが大きい。
指標③:ランディングページ別離脱率
確認場所: GA4 →「レポート」→「エンゲージメント」→「ランディングページ」
広告のリンク先(ランディングページ)ごとに直帰率・エンゲージメント率を確認します。
直帰率80%超のランディングページがある場合、そのページに広告費を使い続けても転換は改善しません。ページ内容と広告メッセージの一致性(メッセージマッチ)を見直してください。
指標④:購入ファネル(eコマース)
確認場所: GA4 →「レポート」→「収益化」→「購入経路」
商品閲覧 → カートに追加 → チェックアウト開始 → 購入完了 の各ステップの通過率を確認します。
例:
商品詳細ページ閲覧: 1,000人
カート追加: 120人(12%)
チェックアウト開始: 80人(67%)
購入完了: 40人(50%)
全体転換率: 4.0%(40/1,000)
最大離脱ポイント: カート追加(88%が離脱)
最大の離脱ポイントを特定することで、改善すべき箇所が明確になります。
指標⑤:新規 vs リピーター比率
確認場所: GA4 →「レポート」→「維持率」→「ユーザーの維持率」または Shopify管理画面の顧客レポート
新規ユーザーとリピーターの比率と、それぞれの転換率・購入金額を比較します。
リピーターは一般に転換率が新規の3〜5倍です。リピーター比率が低い(新規ばかり)のは、獲得コストが高止まりしているサインです。
3-2 ファネル分析:どこで客が離脱しているか
購買ファネルの全体像を把握するために、以下のデータを一枚のシートにまとめます。
ファネル分析シートの作り方
Step 1: 数値を集める
| ステップ | 数値 | 取得場所 |
|---|---|---|
| 月間セッション数 | GA4 > 概要 | |
| 商品ページ閲覧数(ユーザー) | GA4 > エンゲージメント > ページとスクリーン | |
| カート追加数 | GA4 > 収益化 > 購入経路 | |
| チェックアウト開始数 | GA4 > 収益化 > 購入経路 | |
| 購入完了数 | Shopify管理画面 > 注文 |
Step 2: 各ステップの通過率を計算する
商品ページ閲覧率 = 商品ページ閲覧ユーザー ÷ 総セッション数
カート追加率 = カート追加数 ÷ 商品ページ閲覧ユーザー
チェックアウト率 = チェックアウト開始数 ÷ カート追加数
購入完了率 = 購入完了数 ÷ チェックアウト開始数
Step 3: ボトルネックを特定する
各ステップの通過率を業界の目安と比較して、最も低いステップを改善対象とします。
| ステップ | 一般的な通過率の目安 |
|---|---|
| 商品ページ閲覧率 | 40〜60% |
| カート追加率 | 8〜15% |
| チェックアウト率(カート→購入開始) | 60〜75% |
| 購入完了率(購入開始→完了) | 60〜80% |
※ 業種・価格帯・広告流入比率によって大きく異なります。自社の推移変化を重視してください。
よくある離脱パターンと原因
カート追加率が低い(8%未満)
- 商品ページの情報が不足している(サイズ・素材・使用感)
- 価格が競合と比べて説得力に欠ける
- 購入ボタン(Add to Cart)が目立たない
カート→チェックアウト移行率が低い(60%未満)
- 送料が高い・送料無料ラインが不明確
- ゲスト購入ができない(会員登録が必須)
- カートページでの「安心感」が不足(返品ポリシーへのリンクなど)
チェックアウト完了率が低い(60%未満)
- 決済手段が少ない(カードしか使えないなど)
- フォームの入力項目が多すぎる
- セキュリティに不安を感じさせるデザイン
3-3 RFM分析で優良顧客を特定する
RFM分析は、顧客を3つの軸で評価する手法です。
| 指標 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| R(最終購入日) | Recency | 最後に購入したのはいつか |
| F(購入頻度) | Frequency | どれだけ頻繁に購入しているか |
| M(購入金額) | Monetary | これまでにいくら使っているか |
ShopifyでRFM分析を行う方法
Shopify管理画面の「顧客」→「セグメント」から、以下の条件でフィルタリングができます。
優良顧客(VIP層)の抽出条件例:
最終購入日: 過去90日以内
購入回数: 3回以上
合計購入金額: 30,000円以上
休眠顧客の抽出条件例:
最終購入日: 180日以上前
購入回数: 2回以上
RFM分析の活用法
| セグメント | 特徴 | 施策 |
|---|---|---|
| 優良顧客(RFM全て高) | 最も価値が高い | VIP限定オファー、新商品先行案内 |
| 新規優良顧客(R高・F低・M中) | リピートを促したい | ステップメール、2回目購入クーポン |
| 休眠顧客(R低・F高) | かつて良い顧客だった | 復帰キャンペーン、近況報告メール |
| 低価値顧客(RFM全て低) | 広告費をかけすぎない | 費用対効果を見て対応する |
3-4 Shopify管理画面 × GA4 の連携ポイント
ShopifyとGA4は連携設定をすることで、より詳細なデータが取得できます。
連携の確認手順
Step 1: ShopifyのGA4設定を確認する
Shopify管理画面 →「オンラインストア」→「設定」→「Google Analyticsアプリ」(または「Googleチャネル」アプリ)で、GA4の測定IDが正しく設定されているか確認します。
Step 2: GA4のeコマース計測が動いているかを確認する
GA4管理画面 →「DebugView」でShopifyサイトを操作しながら、以下のイベントが発火しているかを確認します:
view_item(商品ページ閲覧)add_to_cart(カートに追加)begin_checkout(チェックアウト開始)purchase(購入完了)
Step 3: Shopify管理画面との数値差異を把握する
GA4とShopify管理画面の売上・注文数は完全には一致しません(ブラウザのJavaScript無効、サードパーティCookie制限などの影響)。差異が20%を超える場合は、計測設定に問題がある可能性があります。
よくある計測ミスと対処法
| 問題 | 症状 | 対処法 |
|---|---|---|
| GA4のpurchaseイベントが計上されない | 購入完了なのに売上がGA4に入らない | Shopifyのサンキューページへのリダイレクト設定を確認 |
| 購入が二重計上される | GA4の注文数がShopifyより多い | GA4タグが2つ設置されていないか確認 |
| キャンペーン参照元が「(direct)」になる | 広告のUTMが機能していない | 広告のリンク先URLにUTMパラメータが付いているか確認 |
3-5 【実践】現状分析シートの作り方
以下のテンプレートを月次でつけていくことで、改善の効果を可視化できます。
月次KPIトラッキングシート
【対象月】YYYY年MM月
■ 流入
月間セッション数: _________
新規ユーザー数: _________
リピーターセッション数: _________
広告セッション比率: _________%
■ 転換
全体転換率(CVR): _________%
スマホCVR: _________%
PCCVR: _________%
カート追加率: _________%
■ 売上
月間売上: ¥_________
注文件数: _________件
平均注文金額(AOV): ¥_________
広告費(Google+Meta): ¥_________
ROAS(売上÷広告費): _________倍
■ 顧客
新規顧客数: _________
リピート購入顧客数: _________
リピート率: _________%
このシートを3ヶ月分並べることで、どの指標が改善・悪化しているかのトレンドが見えます。
まとめ:第3章のポイント
- GA4では「チャネル別転換率」「デバイス別転換率」「購入ファネル」「新規/リピーター比率」の4点を重点的に見る
- ファネル分析で最大離脱ポイントを特定してから施策を実行する
- RFM分析で顧客をセグメントし、施策の投資対効果を最大化する
- ShopifyとGA4の連携が正しく動いているかを定期的に確認する
- 月次KPIを記録し続けることで、施策の効果が客観的に評価できる
次章では、転換率を上げるためのShopifyサイト改善について解説します。